慶應義塾大医学医学部

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第二回アクアフォトミクス国際シンポジウム

2016年11月26日~29日に、神戸大学百年記念館にて「第二回アクアフォトミクス国際シンポジウム」が開催されました。本シンポジウムの代表を務めたのは、「生命をめぐる水」プロジェクトに客員教授として参画する神戸大学ツェンコヴァ教授です。「生命をめぐる水」からは安井教授のほか、アクアフォトミクステーマやシミュレーションテーマを担当するメンバーが揃って参加し、それぞれの研究成果を発表しました。

会場となった神戸大学百年記念館は、エントランスから神戸の街が一望できる美しい建物です。六甲ホールと名づけられた大ホールに、世界中の大学・企業・研究機関から、アクアフォトミクスに関心を持つ研究者が集まりました。講演者の専門分野は、アクアフォトミクスを共通キーワードとしながらも「生体内の水の挙動」「素材と水の相互作用」「水分子の存在状態の解析」などと多岐に渡ります。それぞれの個性あふれる講演に加え、招待講演者のワシントン大学Gerald Pollack教授のお話は、水の新たな可能性を切り拓くような挑戦的なものであり、非常に中身の濃い講演会となりました。

シンポジウム期間中にはメインの講演会に加えて、一般向けのオープン講演会“水を科学する”が開催されました。また、アクアグラム作成やスペクトルデータ解析ソフトの公開といった、アクアフォトミクスの技術的な側面を掘り下げる講座も開催されました。質疑応答では、さまざまな専門分野の考え方が混じり合うような議論が会場を飛び交い、さらに多様な分野にアクアフォトミクスが発展していく可能性を感じました。当日のプログラムや関連情報は、アクアフォトミクスのホームページhttp://aquaphotomics.com/に公開されています。ぜひ、水と光が織りなす新しい科学の世界をご覧ください。
(執筆:沼田)

講演会終了後の集合写真
ツェンコヴァ教授とシンポジウムポスター

[文責:水間]

水分摂取量に関する研究 日本栄養改善学会にて発表

『生命をめぐる水』プロジェクトでは日本人の水分摂取量に関する研究を進めており、今回、その研究成果の一部を9月に開催された‘第63回日本栄養改善学会学術総会’で発表しました。
健康維持に重要な水分補給ですが、意外にも「食べ物」由来を含んだ日本人の総水分摂取量を調査した研究は見られません。同志社女子大学村上教授と共同で、首都圏在住の一般人を対象に日常生活において摂取する全ての「飲み物」「食べ物」を調査し、新たに開発した「食べ物」からの水分摂取量算出方法を用いて総水分摂取量を求めて統計解析を実施しました。
その結果、本調査での日本人の水分摂取量の分布や平均値などの実態を明らかにするとともに、「食べ物」からの割合が高いこと、個人差は「飲み物」からの影響が大きいこと、年代で大きく差があることなど、興味深い現象を見出すことが出来ました。
これからも“生体内の水循環と健康”に関する研究を進めるとともに、その研究成果を広く社会に発信していきたいと思います。

第63回日本栄養改善学会学術総会 会場にて
発表資料より 「各水分摂取量の分布」

[文責:水間]

特別ゼミ"皮膚における水のダイナミクスから『生命をめぐる水』に迫る"を終えて

今年2月に開講した「生命をめぐる水」の特別ゼミが、約半年間、全6回を経て終了しました。ゼミに参加した6名のバックグラウンドは、健康食品、化粧品、嗜好、発酵など多岐に渡ります。それぞれの分野の知識と水科学の知見が混ざり合って、毎回様々な意見や見解が飛び出し、ユニークな議論が展開されました。
特別ゼミ最終回の課題は、参加者ひとりひとりが「水と生きる」を語ること。ゼミを通してそれぞれが考えてきたアイディアが、新たな研究テーマや、水と健康の未来といった形で発表され、参加者の間で質問が飛び交いました。
安井教授が開講時に伝えた“わかったつもりでいることと真の理解とのギャップを埋める”というメッセージは、回を追うごとにゼミ全体に浸透していきました。参加者からは「長年研究してきたテーマも、視点を変えて掘り下げると、まだまだ未知の領域が見えてくる」との感想が聞かれました。
特別ゼミから生まれたアイディアが、新たな価値に繋がることを期待します。

「私にとっての水と生きる」を報告
安井教授からの講評とメッセージ

[文責:水間]

研究現場から -アクアフォトミクス開発者 神戸大学ツェンコヴァ教授-

「生命をめぐる水」のテーマのひとつは“アクアフォトミクス”。光を使って水分子の状態を解析する新しい分野です。神戸大学のツェンコヴァ ルミアナ教授が“水は分子の鏡 water as molecular mirror”というコンセプトでアクアフォトミクスを提唱したのは2005年。それ以来、アクアフォトミクスは乳牛の健康・栄養状態の診断や、ジャイアントパンダの排卵日の検出など様々な生体計測に活用され、水のサイエンスの新しい世界を切り拓いてきました。
先日は慶應大学にてアクアフォトミクステーマに関する研究討論会が開催されました。ツェンコヴァ教授も「生命をめぐる水」プロジェクトの共同研究者として出席。テーマ担当者の進捗報告に対して、「この波長の光ではサンプルの特徴が現れていないか?」といったアクアフォトミクス開発者ならではの鋭い質問を投げかけ、白熱した議論となりました。
体内を流れる水をアクアフォトミクスで分析すると、何が見えてくるか。水分子の振る舞いを光で捉えて健康との関係性を明らかにすることを目標に、テーマ担当者一同、今日も光と水の解析を続けています。
(執筆:沼田)

ツェンコヴァ ルミアナ教授
神戸大学のアクアフォトミクス研究チーム

[文責:水間]

特別ゼミ"皮膚における水のダイナミクスから『生命をめぐる水』に迫る" 開講

「生命をめぐる水」の特別ゼミをサントリーの研究所にて開講しました。テーマは、“皮膚における水のダイナミクスから『生命をめぐる水』に迫る”。水科学との融合から新たな研究分野を切り拓くべく、美容、微生物、健康食品、発酵など多種多様な分野を専門とするサントリーの研究者たち数名が受講を志願しました。慶應大学の“体の中の水”に関する最先端の知識や研究とサントリー研究者たちの多様な個性の出会いが生む“化学反応”が期待されます。
ゼミの初回では、安井教授が提唱する“水の生物学”「water biology」の理解を軸に、参加者各々が感じる疑問をどんどんと掘り下げて白熱した議論となりました。全6回のゼミを通して皮膚の生理学や保湿を中心に意見をぶつけ合い、「生命をめぐる水」の新しい価値を“響創”することを目指します。

「生命をめぐる水」特別ゼミで講義をする安井教授
さまざまな分野を専門とするサントリーの研究者たちが受講

[文責:水間]